先日、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議にて副座長を務めていらっしゃる尾身茂 先生がクラスタについて解説されていました。

加藤厚労相が会見　「クラスター」とは？ 日テレNEWS24 （尾身先生の解説は41:20~)

概要としては、この新型コロナのシンガポールなどの事例を分析していると、どうも以下のような不思議な現象が起きているのではないかとのことでした。

• 5人の感染者の4人は他の人にあまり感染させてない
• 5人の内の1人が他の多くの人に感染させているようである

※5人は例であって、正確なデータではないようです

なぜ、そのようなことが起きているかはウィルス側でなくホスト側の要因によって起きているはずのことでした。体質によって高濃度のウィルスを生成する人が一定割合いて、それが人が集まるところに行くと、爆発的に広まり、クラスタを形成するという風に自分は理解しました。会見の中ではスーパースプレッダとは違うようにもおっしゃっていましたが、今回は簡単のためにスーパースプレッダという用語を使って説明しようと思います。

シミュレーション条件

• 初期感染者は5人
• 各感染者は10人と接触する

＜ケース➀ スーパースプレッダ無＞

• 接触者のうち20%の確率で感染させる

＜ケース➁ スーパースプレッダ有＞

• 感染者のうち20%の確率でスーパースプレッダになる
• スーパースプレッダは接触者に100%感染させる
• スーパースプレッダ以外は接触者に感染させない

シミュレーション結果

接触⇒感染⇒接触⇒感染のサイクルは仮に5日毎として、15日後(３サイクル後)の感染者数をシミュレーションしてみました。1万回シミュレーションしてみて、その結果の人数を区分けして割合を表してみました。

ケース➀、ケース➁どちらも1サイクル毎に平均2倍になるような条件になっているので、3サイクル後の平均は、5×2×2×2 = 40 に近い値になっており、プログラムは大丈夫そうです。

ケース➀では平均に近い21~50人となるのが67%と大半ですが、ケース➁では0人となり終息する場合が39%と高く、また101人以上となる場合も11%もありました。

（ケース➁では最初の5人の中でスーパースプレッダが現れない場合、(4/5)^5 =32.8% の確率で感染が広がらないので、当然といえばそうですが……）

つまり、ケース➁では、各地域にそれぞれ少数の感染者がいたとしても、それがそのまま終息する地域と爆発的に広がり「クラスタ」を形成する地域があるといえると思います。

感染者に地域差があるのはケース➁では当然ありうるので、しっかり検査のサンプリングできていて、感染者が少ないというデータが出ていれば、その地域・その時点ではリスクは少なく、過度に心配する必要はないのかもしれません。

今回は接触者が10人としてますが、大規模イベントなどではさらに一気に感染者が増え、大きなクラスタができる可能性があります。現状、新型コロナの特性から、事前に感染者やスーパースプレッダを見つけることは困難であり、大規模イベントの中止は重要な戦略だと思います。

また、今回、初期感染者は5人としてますが、一度大きなクラスタが起きて例えば100人くらい感染者が発生すれば平均20人程度スーパースプレッダが発生するので、そのままさらに拡大する確率が高く、なにもぜず終息する確率はかなり低くなってしまいます。

ここで、初期感染者を100人、接触者数を10人 ⇒ 2人に制限し、30日後(６サイクル後)のシミュレーションしてみました。

ケース➀、➁とも0人となり終息する割合は7割以上となっています。ほかにもいくつか試したのですが、100人⇒0人のようにクラスタ縮小させる場合は、ケース➀、➁どちらにしろ、接触を強く制限し時間をかけないと難しいようです。

クラスタを考えたときに重要になってくる対策としては、

• 大規模イベントを中止し、発生するクラスタのサイズを小さくする
• 検査体制を広く行い、クラスタの発生をいち早く検知する
• クラスタが発生した地域に対しては、強く接触を制限する

あたりが考えられるかと思います。ただし、仮説に頼り過ぎて、策に溺れないよう注意することも必要かと思います。

自分自身この新型コロナに関して、一度感染が起きると、確実に感染者を増やして、中国のように国全体で都市封鎖や厳しい外出制限など行わないと感染を抑えることができなく、それなしでは武漢のように医療崩壊が起こると思っておりましたが、もしかするとそれ以外に散発的な発生に留める道があるのではないかと今は思っています。

シミュレーションのコードと生データ(github)

• ケース➀スーパースプレッダ無
• ケース➁スーパースプレッダ有

参考

初期感染者5人、接触者5人、15日後