バンコールプロトコルを使って考えてみる-連鎖編ー

2019年03月30日に作成

前回の「ー基礎編ー」に続き、バンコールプロトコルの応用として、法人が他のストックを保有することを考えてみたいと思います。これにより、もしかすると信用が連鎖する好循環のエコノミーができる可能性があるかもしれません。

初期条件

まず、Aさん、Bさん、Cさんの3名にそれぞれ、A法人、B法人、C法人を準備金50万円で設立し、それぞれ100枚のストックを発行します。

「ー基礎編ー」と同様に固定準備率は0.5とし、バンコールプロトコルしたがって、それぞれ100万円の時価総額になります。

ここで、A法人はAさんの分身となる法人で、Aさん個人の意思で動く一人の会社とします。ただし、プロトコルに従わない方法でこっそり準備金を引き出したりはできないとします。

※画像が小さくて見にくい場合は PDFファイルをみてください。また計算内容の詳細はExcelファイルを置いておきます。

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①②B,Cストックの譲渡

Aさんは3Dグラフィックに関するソースコードを作成するプログラマであり、Bさんはそれら使って3Dデザインアプリをセットアップする人、Cさんはそのアプリを使って別のなにかの3Dデザインをする人だと想定します。

①まず、BさんはソースコードをAさんからもらう対価として、Bストックを5枚(時価5万円分)提供したとします。

BストックはAさんではなく、A法人の報酬としていることがポイントです。
ここでは、ある法人が別の法人のストックを 「保有」 できるとします。

②その後CさんはアプリをBさんからもらう対価として、Cストックを10枚(時価10万円分)提供したとします。

※これらの取引直後にはそれぞれの会社の準備金は減っていません。
(Cさんは仮に残りの90枚のストックを換金すればプロトコル上大半(49.5万円)は戻ってきます。だたし、B法人の持っているCストックの準備金の残りは0.5万円と大幅に価値が下がるので、タブーな行動ではあります。)

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③Cストックの換金

③B法人はC法人のストックを売却し、換金したとします。B法人の持っていたCストック10枚はC法人の準備金から換金され、9.5万円のお金がB法人の準備金に積みあがり、その分価格が上昇します。
(Cストック10枚は売買時10万円ではなく、プロトコルの計算上9.5万円となります)

※このときBストックを通じて、A法人の価値も実質的に上昇するともいえます。

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④Bストックの換金

④A法人はB法人のストックを売却し、換金します。A法人の持っていたBストック5枚はB法人の準備金から換金され、5.8万円のお金がA法人の準備金に積みあがり、その分価格が上昇します。

※A法人はC⇒Bの対価の一部もBストックを通じて実質的に得られていることになります。

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仮に、AさんはもらったBストックをすぐ換金する「短期保有(参考)」の場合 このようなC⇒Bの対価の一部が得られることはありません。

メリット

この法人がストックを「保有する」ことにより、以下のメリットが出てくるようになります。

・他のストックを保有し続けるインセンティブが「自然に」発生する

A法人はBストックを保有するとB法人の収入がA法人の一部となるので、Bストックを持ち続ける理由ができます。また、B法人にとっては、なにか保有に対する還元の内容やそのタイミングについて「特別に」考える必要性はありません。

通常株式だと、配当をどのタイミングでどれくらい出すかは難しいところであり、人に投資する場合は、なにか優待内容(ファンイベントの開催とか)を決め、定期的に優待を出し続けることは大変なところだと思います。

しかし、この方式ではもしストック保有者に還元したければ、自分の収入を増やすことだけを考えればよいことになります。AさんはB法人の収入が続かないと判断すれば、換金するだけのことです。そこに約束や責務は存在しないので、Bさんにとっても気楽な形だといえるかもしれません。

・直接取引をしていない「元」の貢献者に「連鎖して」還元される

無限にコピー可能であるソフトウェアやコンテンツ(記事、書籍、音楽、映像)はどうやってその貢献者に還元するかは難しい問題です。

ソフトウェアだと、いろんな作者がつくった部品を使って出来上がったソフトによって報酬を得たとして、その全部を管理して、元のそれぞれの貢献者に配分することは不可能ではないかと思います。

書籍では本を買ったとき、本の作者に印税が還元されますし、音楽ではCDを買ったり、カラオケで歌えば、作曲者、作詞者、歌手にお金が流れるようになっています。確かに、それも一つの方法ではありますが、消費者からの対価をどのように配分されるかに正解はない気がします。

この方式では、特に配分ルールを個別に設定していませんが、対価の一部は元の貢献者に還元される形になります。

また、今回の例は一方通行でしたが、それぞれの個人が提供するものがあり、広くネットワークができる場合、自分が作ったものがまわりまわって、自分に返ってくるような好循環なエコノミーができるかもしれません。

信用と利己の微妙なバランス

さて、AさんはBさんを信用すべきか、BさんはAさんを信用すべきかというのはとても微妙な問題です。

AさんにとってBストックは利益を生む可能性があるので、持ち続けるインセンティブが働きますが、仮にBが裏切ってBさんが保有するBストックをすべて換金するとA法人が保有するBストックはほとんど無価値になります。このため、AさんはBさんに対して、期待とリスクのジレンマは避けられません。

また、BさんはAさんに自分の持っているBストックをA法人に対価として渡すメリットはあるでしょうか?単に収入の一部がA法人に流れるのなら、なるべくBストックは渡したくないはずです。

ここで、仮にBストックではなく現金5万円を渡すこともできるとします。現金で渡す場合はその分手元にお金が5万円なくなります。しかし、Bストックで渡した場合は、5枚で済むので、仮に誰も換金しない場合は20回(5枚×20回=100枚)使えます。Bさんが出資した額は50万円に対して、100万円分使うことできます。なので、BさんはA法人が換金せずBストックのままに持っていた方がお得と考えるかもしれません。

どちらの方向かはバランスなのでわかりませんが、お互いを信用する方向ならば、より多くのストックが共有される方向になるはずです。

未確定なこと

・対価のかたち

今回対価について詳しく書いていません。BさんがAさんのソースコードを使ったとき、どのタイミングでどのような形で対価を渡すかというのはいろんな形がありえるかと思います。Aさんがソースコード使う条件として対価をBさんに要求する形もありますが、Bさんがお世話になったAさんへのお礼として、自主的にストックを贈与する形もあると思います。

対価をストックのみ、もしくは現金のみで限定できるようにするか、またどちら側が限定できるようするか なども決まってません。

・法人の権限

A法人をAさんがどこまで自由にできるかは未設定な部分です。
基本的にA法人において、「収入の分配」は実質的にストックの持ち分比率なりますが、保有するストックのどれをいつ換金するかなどの「権限」は比率にかかわらずAさんの独断のままでよいのではないかと思います。

また、買占めが起きて、自分の法人のストックの自分保有する割合が極端に少なくなり、自分に入る利益が少なくなった場合、なにか自己破産みたいな解散権を持つべきかどうかも難しいところです。

・実現課題

今回、ブロックチェーンとかまじめに考えてないので、どうゆうシステムにするかは未検討な部分です。また現金のままだと瞬時に送金が難しいので、現金1円⇔1ポイントみたいな電子マネーに交換する部分も考える必要があると思います。

株式会社などからイメージしやすいかと思って、「法人」とかいてしまいましたが、現状、法的に認められているはずはないので、それぞれ、いいネーミングとかも必要かもしれません。

他にも結局、マルチ商法や投資詐欺につながる可能性もあるので、法的なところも難しいのじゃないかと思います。

おわりに

なにか世の中がよくなるような情報はなるべく早く広まった方がいい(イノベーションは「早めた」人がエラいと思う理由)と思っています。

情報に対して、現在、対価を得る方法は、特許、ライセンス、印税、サブスクリプションなどはいくつかありますが、まだまだいろんなかたちがあるのかもしれません。情報は権利と厳密なルールで固めると、他の人が使いづらく波及効果が小さくなるので、ゆるめの信用によって配分されるほうが、より多くのもの生み出せるような気がします。

今回のものは、バンコールプロトコルを最近知って面白かったので、自分でいろいろ考えていたら出てきたもので、個人的にちょっと面白いと思ったので、この記事を書いてみました。

もし面白いと思っていただける方がいたとしたら、自由に使ってもらって、いろいろ考えてみると面白いかもしれません。

参考

バンコールプロトコルの詳しい式が知りたい人は他の人の資料を参考にしてください

関連記事

※2019年4月4日この記事は
https://alis.to/samacoba/articles/3XmWX5A4mAyw
へ転記