空気の熱でお湯を沸かすエコキュート

2005年04月16日に作成

あれ?って思う人のためにこのページを作ってみました。

最近、「空気の熱でお湯が沸く」「空気の力でお湯が沸く」「空気でお湯を沸かす」など給湯器「エコキュート」の宣伝をよく耳にします。でも、「なんで空気でお湯が沸くのか?」と思う人がいると思います。まず、これは誤解を受けやすい表現なので、ちゃんと言い換えるとするとエコキュートは

「電気のエネルギーを使い、空気中の熱を利用してお湯を沸かす給湯器」

といえます。

電気のエネルギー使うと熱をくみ上げることができます。エコキュートの場合、外の温度が20℃とすると、その20℃の外の空気から熱をうばい、水にその熱を与えることによって90℃のお湯にすることができます。 この熱をくみ上げる機械のことをヒートポンプと言います。「エコキュート」のほかにエアコンもヒートポンプに含まれます。どういう仕組みでこのヒートポンプが動いているかはめんどくさいので説明しません。

とりあえず電気のエネルギーを使うと熱をくみ上げられるということは事実です。

このヒートポンプ使うといいことがあります。エコキュートの場合、もし100の電気エネルギーを投入したとすると、外の空気中から200の熱をうばい、電気のエネルギー100+空気中の熱エネルギー200=合計300の熱が水に与えられ、お湯に変わります。つまり100の電気エネルギーを使って、300の熱を使うことができるということになります。

では、ガス給湯器とエコキュートではどちらが効率がよいのでしょうか?まずはガス給湯器を考えると、ガス給湯器は単にガスを燃やしてその熱でお湯を沸かしているので、その効率は最大で100%です。次にエコキュートを考えると、まず、火力発電所でガスから電気に変える効率が40%ぐらいです。 この電気を使ってエコキュートを動かすと、外気から熱をうばってお湯を沸かすので、3倍の熱を使えます。したがって40%×3=120%となり、ガス給湯器よりも効率はよくなります。効率が100%を超えていますが、外の空気から熱をくみ上げているわけなので、いわゆる「熱力学第一法則」には反しません。

しかし、「なんとなく物理的におかしい」とか「ヒートポンプを使って作った熱で発電すればエネルギー問題が解決するんじゃない」とか思う人がいるかもしれません。なので次に、少し難しいですが熱力学第二法則について説明したいと思います。

熱力学第二法則について

まず、少し考えてみてください。コップの中に水が入っていたとします。その中に塩を入れたとすると、その中の塩は溶けますしかし、溶けた塩が何もせずに自然と塩の粒が析出することはありません。この「何もせずに」というのは熱したりとか自然蒸発とかもナシということです。この現象は「一方通行」であります。この一方通行な現象は他にもたくさんあり、例えばお湯と水をくっつけておいておくと、両方ぬるま湯になりますが、何もせずにその逆にはなりません。このときの「何もせずに」はヒートポンプなどを使わないということです。

こういう現象をみたり、いろいろな計算をしていくうちに昔の科学者はある仮定に行き着いたのだと思います。その仮定とは熱力学第二法則のことなのですが、はっきりと言葉に表しにくく人によって表現が違ったりします。ひとつの表現としては、「温度差のないところの熱エネルギーを集めて、ものを動かしたりすることは 無理だ」ということになります。また、違う表現を使うと、
「ヒートポンプで作った熱を使って発電機したとしても、電気エネルギーは必ず減っていく」
ということになります。

熱力学第二法則は証明されてないようですが、今ままでいろんな現象を調べてきて、今ほとんどの科学者がこの法則を信じていると思います。何の答えにもなってないかもしれませんが、一般にはそういわれているというしかありません。

次はこの熱力学第二法則を信じた時に現れる効率の限界のルールについて説明していこうと思います。

カルノーサイクルと効率の限界

カルノーサイクルというものがあり、証明ができるものですが、 これを導くのはめんどくさいのでしません。熱い熱源 が絶対温度TH 、冷たい所が絶対温度TLであったとします。この状態でカルノーサイクルによって電気を発電するとしたら、効率ηは

η=1-TL/TH   

となります。例えばTH=727℃、TL=27℃とすると

η=1-(27+273)/(727+273)=0.70

となり、70%の発電効率になります。つまり、下図のように727℃の熱源からの100の熱を使って70の電気を作り、27℃の所に30の熱を捨てます。

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カルノーサイクルでは発電だけでなく、その逆のヒートポンプにも使うことができます。そのとき上の図と逆になるので下の図のようになります。つまり、70の電気を使い、27℃の所から30の熱をうばって、727℃の所に100の熱を与えます。

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このときのヒートポンプの効率εは

ε=100/70=1.43

となります。これを式に表すと、

ε=1/(1-TL/TH)

となります。 ここまでは証明されているカルノーサイクルを使っただけですが、 これに熱力学第二法則を適用します。すると例えばTH=727℃、TL=27℃のとき、必ず発電効率ηは70%以下に、ヒートポンプの効率εは1.43以下になります。

これを説明するために、ここで他のサイクルを使い発電効率が80%にできると仮定します。下図のように電気エネルギーが100あったとき、その電気でカルノーサイクルを使い効率が1.43のヒートポンプを動かし、その熱で発電したとします。すると、100×1.43×0.8=114となり、 最初の電気よりも増えてしまいます。したがって熱力学第二法則に反し、80%の発電効率は無理だということになります。

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同様に他のサイクルを使いヒートポンプの効率が1.6で、カルノーサイクルを使い発電効率が70%であるとすると、100×1.6×0.7=112となり、これも熱力学第二法則に反し、ヒートポンプの効率が1.6は無理だということになります。

画像

ここではη=80%やε=1.6などの場合だけですが、式を使って証明したとすると、カルノーサイクルを上回る発電効率・ヒートポンプ効率をもつサイクルはなく、カルノーサイクルが効率の限界であるということになります。

前の例はTH=727℃でしたが、この温度が変わると効率が変化します。そこで次にTH=127℃、TL=27℃とすると 発電効率ηは

η=1-(27+273)/(123+273)=0.25

以下となり、 ヒートポンプ効率εは

ε=1/{1-(27+273)/(123+273)}=4.0

以下となります。

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式をよく見るとわかると思いますが、発電効率の限界はTHが高いほどよく、 ヒートポンプ効率の限界はTHが低いほどよくなっています。

下図のようにカルノーサイクルを使い、発電はTH=727℃、ヒートポンプはTH=127℃とし、発電に100の熱を投入したとすると、 100×0.7×4=280となり、投入した熱よりも多くの熱を得ることができます。 これは熱力学第一法則にも第二法則にも反していません。実際、似たようなことが火力発電とエコキュートで行われています。

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※ 2019年3月26日 ジオシティーズ閉鎖のため、
http://www.geocities.jp/heatpump_lab/index.html
を移転した記事になります